古往今来

2025(令和7)年12月

 

 校史資料室に所蔵している『校誌 創刊号』は1952(昭和27)年に編まれたもので、巻頭には次のように記されています。
――今回昭和二十四年四月に第一号を発刊し、本年三月第二十一号に及んだ岐高新聞を廃し、ここに本年より年二回の割合で、雑誌〝校誌〟を刊行することゝなりました。
 
新聞を廃し雑誌に代えた理由については上記に続いて、「とかく新聞は読めばその場に於いて抛棄の恐れがあり、長く青春の記念として保存するに足りませんので」とあります。

「校誌 創刊号」の表紙(校史資料室所蔵)

『校誌 創刊号』には〈クラブの歩み〉と題して各部の活動状況が記録されており、ここでは文化系各部についてそれぞれ少しずつ引用してご紹介します。その内容からは、戦後の復興が進んで学校生活が安定し、生徒に横溢する意欲が伝わってきます。

 辯論部   何が何であり、その何が何であるのか、偽の中に多くの人々は生きて来た。その中で「真実なるもの」それは人々の歓心をそゝらない位遠い所へほうり投げられ惰性と因襲との歯車で世の中は廻り続けている。
 放送部   レコードコンサートは毎月一回耳新しいレコード、一般によく知れわたつたものなどを集めておきゝ願つております。しかし現在適当な解説者が当研究会におりませんので、曲名の紹介のみで辛棒していたゞいております。
 茶道部   山浦先生も亦、毎回御弟子さん同伴で御来校になり、それゞゝの程度に応じ、適切な御指導がいたゞけるから、進歩は誠に見るべきものがある。
 華道部   生花も芸術の一つであり、その生ける人の人格が生けた花に表現されるものであり、部員一同は花を生けることを通して人格の養成に努めています。決して華道部は女子のみの分野ではありません。前述のような理由が大きな目標であるから男子の生徒も部員となって、この道を極められることを望んでいます。
 音樂部   豊かな人間性をつちかつてゆこうと言う音楽部合唱団もいよいよ新制中学から来た者ばかりになつてしまつた。今年こそ三年間の出来ばえを調べる年である。
 速記部   私達はよく人から、君、もう先生の講義ぐらいならスラスラ書けるだろう。などと云われる。私達はその都度嘆息するのである。と云うのはこれらの人々が全く速記に対する知識がないからだ。(中略)速記は重要なものではあるが、そんなに簡単に覚えられるものではないということだ。
 科學部物理、天文氣象班   長年の百葉箱設置の計畫も本年ようやく実現。
 科學部化學班   一般器具装置と各種薬品試料の充実を要求して止まない現状である。
 科學部生物班   我が生物部は此の意味において、将来医学、農学等にて身を立てる人、或は純粋生物学者として身を立てる人が集まり(中略)、本年は一年生に斯る大志のある真に有能の士が多く集まり、大いに活況を呈しているのである。
 珠算部   昨秋第三回県下学生珠算競技大会に優勝の栄誉を得た珠算部は、本年も連続優勝をめざして連日練習を致しています。
 タイプ部   此の四月、金曜日のCAに登録した生徒が何と一六〇名。しかも機械は英文九台しかありませんので、一週間の練習日割を作り、学年毎に交替で打たせております。
 文藝クラブ   朝光(あさかげ)は美しく、たくましい。この光の下にみる雪も水も草も殊に新鮮で美しい。晴れた日は晴れた明るさを、雨の日は沈潜した一日の歴史を予言する。(中略)我が文芸部七十余名の今年度の動きもまさに朝光のようなほのゞゝとした光、静かな中に焔の勢をも感じる。
 テアトロ(旧演劇映硏部)   四月以来演劇部は映研部と合併し、名称テアトロ(仮称)として新しく出発することになりました。(中略)観衆は少数しか入れないが、その他の凡ゆる条件を考慮して図書室に上演の場を求め、五月十九日第一回小劇場〝良縁〟を上演したわけです。
 美術部図工班   絵画の方は新しく一年から大勢女子が入部して、毎日非常に熱心に何人か残つて描いている。(中略)工作の方は大体男子ばかりで今度は高さ一米位の本棚をつくるといつて汗を流して板を削つている。
 美術部書道班   特に今年は全日本学生書道連盟が結成されたので、それにつながる行事に参加することによつて活動の分野を広めてゆきたいと思つている。

 タイプ部の文中の「CA」はクラブ活動のことと思われます。クラブ活動については、1947(昭和22)年の「新制高等学校の教科課程に関する件」で、小学校4年以上に設置された教科「自由研究」が高等学校でも設定されました。その運用は、大学進学の準備課程でその他(自由研究)16単位、職業人の準備課程でその他(自由研究)22単位とされました。  しかし教科学習の発展という趣旨の指導方法は難しく、実際にはクラブ活動の形態で行われることが多かったことから、1951(昭和26)年の「学習指導要領一般編(試案)改訂版」で教科「自由研究」は廃止され、特別教育活動でクラブ活動などの内容を扱うことが確立されました。

参考文献
「校誌 創刊号」岐阜県立岐阜高等学校雑誌部・園部義邦編(1952年)
学校現場におけるクラブ活動および部活動の課題と対応、樽木靖夫・木村昭雄・髙田麻美、千葉大学教育学部研究紀要、第66巻、第1号、27~34(2017)


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